上海でのこと。
喫茶店でミーティングの打ち合わせがあったのですが、呼んでいない人が現れました。
用心棒を連れて。
この用心棒は挨拶もなく私の隣に座りました。
「なんだこいつは?」「ナンダトハナンダ」
日本語がしゃべれる。
足を広げて腕を組んで目をつむりうつむいている彼の服は黒の革ジャン。
私は腕をさすり「あんた強いの?」と訊いた。「ツヨイ」と答えた。
なぜかわかんないけど吹出しそうになり、というか本当に吹き出し、治療中の前歯の
仮歯が飛び出そうになった。
議論は白熱して彼のことを忘れていたが、ふとあらためてその男が気になった。
「何えらそうに足広げてんだ」
「あんたさっき失礼なことした。女性を指差すのは失礼だ」
「あんたがいることのほうがよっぽど失礼だろう」
三倍の声で言い返しました。
帰り際、おつとめご苦労、と腕をもんでやってついでに、理由も道理もないですが
握手しました。手がビショビショ。手の発汗は不安と緊張のサインですが、
「そうか緊張してたのか」と思ったら彼に愛が芽生えた。
(頑張ったな)
ところで私、暴力は嫌いです。
高校から今に至るまで殴ったことないです。本気で殴ったことは。
柔和です。ついでの話ですが知り合いの格闘家も柔和です。